ISOYA Hirofumi Works
「写真というメディアの宿命は、過去しか撮れないこと。僕はそれを額縁という物体に納めることで、現実の空間内で、ある種の彫刻として存在させる」と磯谷博史は話す。今回彼は、写真にまつわる2つの作品を展示する。
《5つの印象》は、日英2種類のセピアカラーのポスターに、着彩が施された作品。日時や場所などが記されているが、これは当初予定されていた、ある大型イベントの内容と重なる。写真の手のひらには、そのイベントを象徴するかのような5つの丸い跡がついているが、これは5種類の「強い国々」の硬貨を押し当てた跡。表面に描かれたペイントは、もともと手のひらに残る充血の色を抽出している。経済効果ばかりが取り上げられ、人々の怒りや疑問の声があがる現在の状況とも重なるかもしれない。ニスの乗った写真や文字は印刷であるが、強い物質感を持つ。さらに上から重なる絵の具により現在性が強調されている。
《事のもつれ 10》は、棚に乗る2つの額装写真から成る作品。写真のなかに映る、今にも落下しそうな額縁は、よく見れば目の前の額縁である。過去の出来事であるはずの写真であるのに、まるで未来を示唆するような想像をさせる。人々の直感と認知の違和感が自ずと露呈するインスタレーションである。
礒谷博史の《事のもつれ 10》のご購入については、お問い合わせください。《5つの印象》は、リンクよりご購入いただけます。
磯谷博史
美術家。 1978年生まれ。東京藝術大学建築科を卒業後、同大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻およびロンドン大学ゴールドスミス校で美術を学ぶ。写真、彫刻、ドローイング、それらの相互の関わりを通して、事物への認識を再考している。近年の主な展覧会に「動詞を見つける」(小海町高原美術館、長野、2022)、「Constellations: Photographs in Dialogue」(サンフランシスコ近代美術館、2021)、「L’image et son double」(ポンピドゥー・センター、パリ、2021)など。
website: https://www.whoisisoya.com/
instagram : https://www.instagram.com/hirofumi_isoya/